日本横断夢の縦走A 白馬岳〜種池山荘
(歩行距離 43.1km)
台風一過の8月13日〜17日、不帰のキレット、不帰の瞼、八峰キレット等の難所を走破、残念ながら天候が悪く、雨、風、霧に悪戦苦闘の山行であった。

参加メンバ−

隊長の坪井
参謀の三枝子
一寸待っての坂本
テント生活師範の左光
心配性のマリア
最年少の鶴飼
最年長の関
新人の長島
以上8名(敬称略)

8月13日      栂池自然園〜天狗山荘
            行動   9時間30分(15.5km)
            朝食   各自
            夕食   ご飯、バンバンジ−、ス−プ
夜中に出るム−ンライト信州は、お盆の帰省客が多く満席である。
隊長は早速、靴、靴下を脱いでリラックス、皆にも勧めている、松本を過ぎると乗客も減る、席を移り各自2座席を使って仮眠、5:40白馬駅に着く、タクシ−で栂池高原に移動、リフトで栂(マツ科の常緑樹、樹皮からタンニンを採り、魚網の染料とした)の茂る樹林帯を登る、栂池自然園で降り最年少の鶴飼による気合入れ、「日本横断夢の縦走 行くぞ ! オ−、 行くぞ ! オ−、  行くぞ ! オ− 」


石だらけの道は昨日の大雨のせいで水溜りが多い、表面がスプ−ンカットのミニ雪田を越え、大きなケルンの側で一本、大きな石がゴロゴロした道を白馬大池へ下る。
 小蓮華山頂でお昼、三国境から雪倉岳へつながる道が霞んで見える、前回に歩いた道だ、白馬岳山頂はあっさり着いてしまった為か前回ほどの感激は無い、今日はここから3時間強の天狗山荘を目指す。









 大雪渓を左に見て最低鞍部まで下ると、左前方に杓子岳(白馬三山・2812m)が大きく立ちはだかる、頂上近くで右に巻いて下ると、眼前の鑓ヶ岳(白馬三山・2903m)が我々を圧倒する、誰かが「あれを登るのか−」等と言っている。
 「これが本日の正念場だ」隊長の檄が飛ぶ、見た目にはとてつもなく高く、大変そうであるが、ジグザグに付いた道をゆっくり登る、頂上からガレ場を下った2774mのピ−クで天狗山荘が見える、参謀の三枝子は携帯で天気予報を見る、今夜より明け方3時まで雨、明日は風雨であると云う、 ム−・・・・・


 山荘に着き長島が受付に行き、トイレ、水場も聞いて来る、隊長は管理人に天気予報を聞く、今夜、明日とも降っても大した事は無いと云う、 ム−・・・・・
 今回は男性と女性でテントを分ける、従って当然ではあるが、男性も炊事をする、関がキュウリを千切りにし、長島がシソをみじんに切る、鶏肉(真空パックの調理済み)に載せ、タレをかけると、バンバンジ−の出来上がり、長島の炊いたご飯も満点の出来である。
 夜、風雨が強まる、明日は止むのか・・・




【栂池自然園7:05 白馬大池山荘9:55 小蓮華山11:40 三国境12:30
白馬岳13:10 杓子岳巻き道14:35 鑓ヶ岳15:40 天狗山荘16:30】 

8月14日       停滞
            朝食   雑炊・餅
            夕食   雲丹ご飯、切干し大根の煮物、ス−プ
 3:30起床、5:00出発の予定であったが風雨が強く、濃霧である、視界は10m位か、今日は行動出来そうにない、テントを撤収し小屋の自炊者用食堂で朝食を摂り様子を見る。
 雨は時折烈しく降る、風は益々強くなる、霧は濃い、先は不帰の瞼、八峰キレット等の難所である、 ム−・・・・・ 
 TVの天気予報は今一はっきりしない。 自炊者用食堂の前には何人もの人が思案顔である、九州の6人パ−ティ−(含む72歳男性2人)は停滞すると言う、意を決して出掛けるパ−ティ−もある、入口近くで若い男女の2人が相談している、我々は白馬鑓温泉を経由して猿倉へ撤退する事も含め検討、結局予備日が1日あるので停滞に決める。
 部屋へ入るのは掃除の終わる10時からなので食堂で待つ、その間、何組ものパ−ティ−が出掛けた、入口近くの若い男女も何時の間にか出掛けたらしい。  
 10時少し前から部屋に入る、乾燥室にはフアン付きのスト−ブが、ガンガン燃えておりありがたい、銀マット、エアマット、シュラフ等を乾す。

 昼食は各自うどん、牛丼等を頼み、男性はビ−ルを飲みリラックスする、この間、一度は出掛けたものの強風の為、戻って来たパ−ティ−もある。
1人の中高年男性がズブ濡れで入って来る、唐松岳から不帰の瞼を越えて来たと言う、途中のキレットで女性1人が滑落したと話す、食堂に居た全員に緊張が走る、あの若い男
女パ−ティ−ではなかろうか ・・・・・・・・・・・
(後に愛知県の高校教諭・桐山恵美子さん29歳が滑落死したと分かる)

この後も何人かが唐松岳からたどり着き、乾燥室に入り「命拾いした」と震えている女性、不帰の瞼はそれ程でも無かったが、天狗平では強風で立って歩けず、這って来たと話す男性、 ・・・・・・・・・・・・
 休みの関係、仕事の関係等と様々な理由があるのだろうが、北アルプスの難所を荒天時に歩く事は無謀である、我々もこれをもって「他山の石」としたい。
 午後はヨガ歴4年のマリアによる、ヨガ教室入門、マリアによるとヨガの為のウオ−ミングアップの様なものだそうである。

8月15日      天狗山荘〜五竜山荘
            行動   6時間45分(9.0km)
            朝食   卵ス−プ、餅
            夕食   ご飯、カレ−、海藻サラダ、ス−プ



3:30起床、5:00マリアの気合入れで出発、雨は止んでいるが風と霧はある、
天狗平は強風である、10m位か。
 ガレ道の天狗の大下り、要所には鎖が付いている、この最低鞍部が不帰のキレットである、霧が濃くよく見えない事もあり緊張感は無い。










不帰の瞼一峰、いきなりチムニ−状の岩溝だ、大丈夫、しっかりしたホ−ルドがある、鎖の連続する岩稜を登る、霧は濃いが鎖や岩角が滑る事は無い、鉄梯子を渡り岩場を通過する、霧が無ければ足の竦む思いの場所である。
 不帰の瞼二峰、いよいよ核心部である、垂直かとも思える岩壁、マリアは見上げたまま動けない、「怖い」と云う、大丈夫、鎖が付いている。









先頭の三枝子は2番手のマリアと少し距離を保ち、ペンキ印(旧く擦れた印と新しい印がある)を確認してからマリアに手、足の場所を指示している、
 9:00唐松岳頂上である、不帰の瞼三峰は何時の間にか通過していたのだ、霧の為  スキ−場へ続くハ方尾根は見えない。
 一番悪い場所は脱したものの気は抜けない、慎重に歩を進め、昼前に五竜山荘に着く。







































テント場は棚田の様に段々になっている、一番上に場所を決める、風が強いので張り綱を大きな石でしっかり固定する。
 お湯を沸かしてティ−タイム、ほっとくつろぐ、大変な一日であった。
夕食はカレ−である、お湯を入れるだけなので簡単だ、ご飯は関が炊く、満点である。

【天狗山荘5:00 不帰のキレット6:40 唐松岳9:00 五竜山荘11:45】

8月16日       五竜山荘〜冷池山荘
            行動   9時間15分(9.5km)
            朝食   ネギ塩ス−プ・餅
            夕食   行動食
3:30起床、昨夜は断続的に雨が降る、今朝は霧が濃く、風も強い、明け方トイレに出た坪井と長島は、帰りに濃霧の為テントを間違えウロウロする、それを察した関がライトを照らしてくれたので無事戻る。
 テント撤収時に強い風に煽られ、ポ−ルの接続部が破断し、小屋の入口前で予備の部品を使い修理する。



 今日は昨日の不帰の瞼に劣らず急竣で知られた、G5、北尾根ノ頭、ハ峰キレット等の通過が待っている、左光の気合入れで5:00出発、小雨と霧の中を五竜岳へ向う、山頂直下の岩場でマリアが固まる、山頂では雨足が強くなる、山荘まで戻り引き返して遠見尾根を下る事も考えたが、最悪キレット小屋もあるので先に進む事にする、九州の6人組が追い付いて来て、やはり鹿島槍ヶ岳へ向う。








 霧が濃い、視界は30m位か、急竣のG5もさして恐怖感も無く通過、2つの鉄梯子が連続している北尾根ノ頭、隊長より梯子の縦の枠は掴まず、横の桟を握る様指示あり、縦の枠は滑りやすいのである、急な岩場の三段登り、先頭の三枝子から石を落とさない様注意あり、ガレ場を下ると霧の中からキレット小屋が現れる、九州の6人組とは入れ違いになった様である。







 食堂に入りゆっくり休憩、全員どん兵衛(300円)を注文、お湯の温度が低かったのか少し麺が硬い。
 キレット小屋から岩場に取り付き登り出す、と長島が雉撃ちをしたいと云う、(小屋で済ませば良いものを・・・)長島はお坊ちゃま育ちで、どん兵衛などは初めて食べたと云う、
まして少し硬めだったので腹が拒否したとの事、 ム−・・・・好き嫌いが全然無く、何でも食べる隊長の気持は複雑である。



鎖をたよりにハ峰キレットを登る、本来はすさまじい迫力の筈であるが、霧のお陰で怖さは感じない。
 鶴飼の動きがいい、岩登り等していないのであるが、先頭の三枝子が、岩から身体を離して、足元を確認して降りる様に、と言うとその通り実行している、一方マリアは岩にへばり付いて足元を見ていない。
隊長は前を行くMのカッパのズボンの、お尻の部分が5cm程切れているのに気付く、
休憩時左光にガムテ−プで修理してもらう、カッパの内側からガムテ−プを貼ったのであるが、お座なりな為か、かえってガムテ−プの裏側の白さが目立ってしまう、頭の上で切れ目が白くチラチラするので隊長は大いに弱る。


 浮石の多い鹿島槍ヶ岳北峰は巻いて南峰(2889m)へ、双耳峰の鹿島槍ヶ岳は後立山の盟主と言えようか、堂々たる山容である。

 布引山からは本日の目的地、冷池山荘が見える、もう一分張りである、途中ブル−ベリ−を探しながら歩くもあまり無い、今年は不作か。


 14:00冷池山荘手前のテント場に着く、ここでテント泊にするか、小屋泊りにするか検討、本来はテント泊なのであるが、天気予報では今夜は雷雨との事、小屋泊りに決める、小屋へ行く途中何ヶ所かに「トイレは小屋のものを使用下さい」との注意書きがある、
テント場と小屋は10分〜15分位離れているので、途中で用を足す人がいるのであろう。



 山荘に着き、ストレッチをしていると、2階の窓から九州6人組のリ−ダ−より挨拶がある、相当に達者なメンバ−である。
 素泊り6000円,天狗山荘での素泊り6300円と予定外の出費となった為、資金が苦しくなる、夕食は各自の行動食の残りを当てる。
 2階の談話室ではスト−ブが燃えていて気持よい、ビ−ルでくつろぐ。
 寝室では男性と女性が足を向かい合わせで寝る、マリアの足が長い為か、向いの長島の蒲団に足が入ってしまうらしい、長島は「どうぞ・どうぞ」等と言っている、一頻りのおしゃべりも終わり、皆が静かになった時、「ネズミだ−」と三枝子の叫び、隣の左光が枕元で、薬をガサガサと出していたものらしい。

【五竜山荘5:00 五竜岳6:05 キレット小屋9:55 鹿島槍南峰12:25
布引山13:15 冷池山荘14:15】


8月17日       冷池山荘〜扇沢
            行動   3時間30分(9.1km)
            朝食   行動食
 夜明け前、窓から覗いた三枝子は「星空だ−、種池山荘の明かりも見える」と言う、今日は晴れらしい、3:30起床、自炊者用食堂に移り、お湯を沸かし朝食、各自残りの行動食を食べる、隊長と三枝子は乾パン、リッチな関と長島は昨夜頼んでいた弁当である。
















5:05三枝子の気合入れで出発、剣岳が良く見える、頂上近くまで延びている雪渓が「点の記」で有名になった長次郎谷である。
 雷鳥の親子を見る、最終日は天気に恵まれた、これは良く歩いたご褒美であろう、種池山荘でタクシ−の予約をする、予約料は1000円であるがタクシ−料金に含まれる。
















 山荘より樹林帯の柏原新道を下る、左光が大粒の野苺を見つける、美味い !
紅葉坂の急坂を下るとタクシ−が待っている、見ると座席にビニ−ルシ−トが敷いてある、
4日間も風呂に入らず汗だくで歩き廻ったのである、相当の匂いであるとは思うものの、何やら家畜扱いの様な気がする、途中待望の温泉で汗を流す、前回はナカナカ出て来なかった女性陣は、今回は三枝子より30分と言われ、男性陣より早く出て来る、待っていたタクシ−の座席からビニ−ルシ−トは消えていた、人間扱いに戻った様である。




運転手さんお薦めの、餃子と野菜炒めが美味しいという「俵屋」に行くが11:30開店と云う、1時間近くもあるので信濃大町駅まで行き、各自適当な食べ物と飲み物を買い電車に乗り込み、今回費用21700円を清算する。


【冷池山荘5:05 爺ヶ岳6:25 種池山荘7:05 扇沢9:30】