2012年10月5日〜9日
分水嶺37 平ヶ岳〜大水上山
念願の利根川源流部の分水嶺を踏破!

ichiran ichiran  map

メンバー: MrT(CL)、TuB(SL)、KwS、TkZ、YmT、YbT

 利根川源流で最後に残った平ヶ岳、大水上山の藪行軍に挑んだ。これまでの分水嶺シリーズで最も厳しい山行といえるだろう。確かに厳しかった。でも、楽しかった。この充実感と達成感は生涯忘れない。

2012年10月5日 金曜日 晴

 6:08 Max とき301号に乗る。平日のこの時間は、さすがに乗客も少ない。メンバーは皆、今日の天気と同じように晴れ晴れとした表情をしている。さすがに今回は、気合十分で望んでいるようだ。
 このルートに挑戦するのは3回目。去年の5月には、十字峡から中ノ岳を経て大水上山まで歩いたが、強風のため一日の停滞。その後の平ヶ岳を越えて至仏山まで縦走するのに必要な予備燃料が足りず無念のリタイア。 今年の5月は、しゃくなげ湖北岸の道が集中豪雨による崩壊で通行不能、南岸の道も雪崩の危険が高く通行不能とのことで、縦走を断念し、尾瀬側から平ヶ岳のピストンに変更し、平ヶ岳〜大水上山間が未踏のまま残ってしまった。この2回の山行で認識したのが、残雪期のこのルートのリスク。最近の温暖化で5月連休の雪庇の状態は非常に不安定になっている。劒ヶ倉の岩稜帯の雪庇も、ちょうど崩れるタイミングにあたり、ルートの判断が難しい。特に大人数のパーティでは、先頭が歩くことで雪がが崩れ、後続が同じルートを歩けるとは限らず、危険が伴う。そこで計画したのが、無雪期の藪突破である。積雪期に比べると2倍以上の時間がかかるが、危険は少ない。問題はアクセス路。一昨年7月の集中豪雨で、十字峡への道も、平ヶ岳登山口へ通じる国道352号線も通行止めになっている。十字峡へ向かうしゃくなげ湖北岸の道の復旧の目処は立っていないようだが、トンネルが主体の南岸の道は開通した。国道352号線については、南魚沼地域振興局に10月1日開通見込みのであることを確認し、丹後山避難小屋の天水タンクが撤去される10月中旬までの間の、ワンチャンスを狙って計画したのが今回の計画である。体育の日の3連休の前後に一日ずつ休みをつけて、3泊4日+予備日1日の計画とした。
 7:37 浦佐の駅に着き、予約していたジャンボタクシーに乗る。市内を少し走った後、奥只見シルバーラインを通って銀山平に出る。ここからは、4日前に開通したばかりの国道352号線を走る。奥只見湖の南岸の複雑な起伏を縫うように走る。道のあちこちに補修の跡がある。沢は土砂や倒木に埋められていて、豪雨の被害が大きかったことが分かる。中ノ岐川を過ぎると、工事中の場所が何度も出てくる。ロープ1本でぶら下がった作業員がコンクリートの打ち込みをしている。なんとか予定通りに開通させたものの、補修工事は未だ終わっていないようだ。雪が降る前に工事を終わらせないと、今度は雪崩で道が崩れてしまう。やはり、人の営みは、自然の利用と、自然との対抗の両面があって成り立っているのだ。
 9:47 鷹ノ巣の登山口に着く。工事による通行規制などもありずいぶん時間がかかった。タクシー料金\26,970。往復5時間近くを拘束することを考えれば高いとはいえないだろう。空に浮かぶのは、秋というよりは夏の雲だ。日焼け止めを塗る。
鷹ノ巣登山口−下台倉山 10:08−13:05 距離3500m 平均速度 1190m/h 登攀速度 270m/h
 登山届けのポストの脇から登山道に入る。登山道というより散策路といったほうがいいかもしれない。下台倉沢を丸太の橋で渡り、下台倉山の東尾根に取り付く。傾斜がきつくなり、ときどき鎖場も出てくるがしっかり整備された道で安心して歩ける。1050m付近と、1406mで休憩する。
岩場 燧ケ岳
下台倉山へ痩せ尾根を登る

燧ケ岳の奥には日光白根が見える

下台倉山−台倉山 13:14−13:58 距離2010m 平均速度 27300m/h 登攀速度 120m/h
 下台倉山からは南に進路を変え、ほぼ水平に歩いていく。3組ほどの下山者とすれ違う。登りのコースタイムが7時間。日帰りでピストンするのは厳しい山だ。話を聞いてみると明け方は雨が降っていたらしく出発が遅くなり、今日のパーティは、誰も玉子岩へ寄っている時間はなかったとのこと。
秋の気配 台倉山
1600mの稜線では秋が始まっていた

台倉山の三角点は御機嫌斜め

台倉山−白沢清水 14:05−15:05 距離2050m 平均速度 1720m/h
 台倉山からは再び西に進路を変えて林の中を歩く。台倉清水は登山道から少し離れているのでよらなかった。
白沢清水−池ノ岳テントサイト 15:14−16:48 距離2.5km 平均速度 1210m/h 登攀速度 150m/h
 白沢清水は小さな水溜り。よく見ると水面の様子から水が沸いていることが分かる。1900mからは視界が開けて池ノ岳と平ヶ岳が見えてくる。池ノ岳に登ると姫の池の前のウッドデッキにテントが一張り張られていた。我々は、平ヶ岳沢の源頭部のテントサイトに向かう。ウッドデッキは大分傾いていたが、傍を流れている水は、澄んでいて美味しい。紅茶にブランデーを少し入れて乾杯する。今回は、分水嶺シリーズで初めて酒気制限令を出した。個人でのお酒の持参は止めて、共同で各テント500cc以下のブランデーないしウィスキーに制限した。今回のルートでは、この水場を出発すると丹後山の避難小屋まで確実に水がを取れる場所はない。そこで、必要以上の水分摂取をしないため、お酒の楽しみは下山まで我慢することにした。初日の夕食は煮込みうどん。腰のある生めんと、しっかり野菜で、体を温めた。
台倉山
白沢清水は小さな水溜り

姫の池の前で平ヶ岳をバックに記念撮影


2012年10月6日 土曜日 曇り 夜雨

 4時に起床。今日のメニューは、新メニュのフレンチトースト。玉子2個に牛乳1パック、砂糖を入れて、フランスパンをつける。我々のテントでは大き目のフライパンを使ったので、美味しく焼けたが、もうひとつのテントでは、チタンの小型のフライパンで火加減に苦労したようだ。用意してきた水容器を満タンにしてザックにつめる。個人の行動用も含めると9.5リットル。テントとロープなどもあり、27−8kgぐらいだろう。今日は、藪に加えて重さとの戦いになる。
池ノ岳テントサイト−平ヶ岳三角点 5:41−6:05 距離790m 平均速度 1970m/h 登攀速度 150m/h
 天気予報では、今日から気温が下がるという予想だったが、それほど寒くはない。木道に沿って林の中を抜けると湿原に出る。すでに花は終わっている。短い夏の日を浴びて伸びた草紅葉が長い雪に備えて身構えている。
キャンプサイト 草紅葉
朝霧の中、テントサイトを出発

草紅葉の平ヶ岳

平ヶ岳三角点−2072 6:14−7:35 距離1330m 平均速度 980m/h
 平ヶ岳の三角点は、最高地点から少し離れた林の中にある。なぜ、こんなに眺めの悪いところに作ったのだろう。頂上の湿原の中では、動かないように固定するのが難しいからかもしれない。ここから分水嶺の歩きに入る。木道を進むと山頂部に出る。5月に来たときに目印にした積雪量自動測定ポールを探したが見つからなかった。突然、柵が現れて木道が終わるがしっかりした道が続いている。さらに行くと、もう一度、柵が現れて道は踏み跡に変わる。しかし、踏み跡も僅かな間だけで、下りに入ると背の高さほどの笹薮に突入した。1時間ほどかけて2072mの小ピークまで歩く。ここはまでは5月に偵察に来ている。その時は、風は強かったものの雪原の上を軽快に歩いて20分ほどで歩けている。残雪期の1/3のスピード。大水上山まで残雪期に健脚者で1日のコース。このペースでは3日かかることになる。やはり予備日の使用は必須だろうと気を引き締める。
平ヶ岳三角点 踏み後
平ヶ岳三角点

踏み跡があったのは僅かな間

2072−劒ヶ倉山 7:38−10:06 距離1230m 平均速度 500m/h
 目指す劒ヶ倉山はガスの中に見え隠れしている。劒ヶ倉山までは残雪期には最も注意を要する区間。平ヶ岳からの急斜面の雪壁、劒ヶ倉山南東の岩稜の雪庇の通過。我々が残雪期の山行を諦めた要因のひとつだった。最低鞍部までは、180mほどを100分ほどかけて下る。傾斜が急なところもあるが潅木に掴まって下れば安心。心配していた劒ヶ倉山の稜線は膝下の藪で、トップは軽快に登っていく。僕は、ここでよろけたら命はないなと思いながら重荷と格闘して必死に追いかける。30分ほどで90mを登り切る。
劒ヶ倉に向けて 劒ヶ倉の登り"
劒ヶ倉に向けてヤブを下る

冬場の難所を軽快に登る

劒ヶ倉山−滝ヶ倉山(1710) 10:27−15:57 距離1880m 平均速度 340m/h
劒ヶ倉山の頂上は笹薮に覆われている。休憩をしていたら偶然三角点を見つけた。ここまでで計画より1時間遅れ。十分に想定範囲内だ。難所をひとつ越えたことで安心するとともに、もう引き返せない、という覚悟もする。滝ヶ倉山までは下り基調。距離を稼げると思っていたが、そう甘くはない。気を抜ける笹薮は極一部で、潅木帯の空中遊泳、蔓との戦い、これまでの山行で鍛えた藪技術を総動員して立ち向かうが、1716mの滝ヶ倉山に着いたときは15:30を回っていた。少し下った笹原を今日のテントサイトとすることにした。ずいぶん斜めだけれど仕方がない。
劒ヶ倉の三角点  vspace=
劒ヶ倉の三角点

にせ藤原山の奥には大水上山が見える

 今日のディナーはサンマ丼。滑り落ちそうなテントの中で、膝の上にコンロを置いてご飯を炊く。上のテントから叫び声がする。なにかをひっくり返したようだ。まあ、やけどはしていないようなのでいいだろう。短辺方向に傾いているので、膝を曲げたまま、短辺方向に並んで寝ることにする。寝ようとしたころ雨が降り出す。外にコッフェルでも並べようかと悩む。雨量が2mm/hとして朝までに、、、。1リットル溜めようとすると直径30cmは要るな、などとシュラフの中で考えているうちに寝てしまった。
釼ガ倉山
昨日越えた釼ガ倉山 左には平ヶ岳、右には至仏山

2012年10月7日 日曜日 曇

 顔の上に落ちてきた雫で目が覚める。起きようとするとテントに頭が当たる。よく見ると一番高いところに風抜きの穴がある。どうも寝ている間に、人間が滑り落ちるのにあわせてテントが回転したようだ。滑り落ちたザックなどを上に上げて、なんとか座れる態勢まで復旧させる。今日の朝食も新メニューの海苔餅。茹でたお持ちに醤油をかけて海苔を巻いて食べる。まあ、悪くはないけれど、やはり海苔餅は焼餅で食べた方がおいしい。
 雨は朝までには上がった。ブリーフィングで目標は10時に藤原山。それが出来れば今日中に丹後山へ行く。届かなければ、オキノ巻倉沢に下りて給水、の方針を伝える。

滝が倉山−1725岩場ピーク 5:45−7:34 距離670m 平均速度 370m/h
今日も男女交互の隊列を組んで藪行軍を始める。後方には昨日越えた釼ガ倉山、奥には平ヶ岳が見える。一日歩いて平ヶ岳から直線距離で3.5kmのところまで来た。大水上山までは直線距離で5km。とにかく前に進むしかない。1725mのルートの屈曲点には岩場がある。ロープを出してKsMがトップで登る。最初の岩場は難なく越える。2番目の岩場は7−8mだろうか。掴む岩は、どれもボロボロと崩れる。バランスに気をつけながら登る。
劒ヶ倉の三角点  vspace=
プルージックで登り

手がかりは一杯あるが信用できない

1725岩場ピーク−にせ藤原山 7:50−10:26 距離1080m 平均速度 420m/h
地形は穏やかなのだが、藪は穏やかではない。潅木を中心とした変化のある藪で飽きることはないのだが休むことも出来ない。トップはとにかく進む。セカンドが枝を整理、後方から地形とGPSを見ながらルートを修正。抜群のチームワークで藪を進む。基本的には尾根のセンターを歩く。多少の潅木は空中遊泳で越えるが、やむなく巻いたときが危ない。体は前を向いていても、ずるずると滑りながら尾根からはずれていってしまう。こんなときには、尾根に向かって真っ直ぐ上り返すのが鉄則。にせ藤原山で10時を回ってしまった。予備日を使うことは、想定内なので問題ないが、最低でも藤原山まで入っておかないと、まずい。口に出さなくても、皆、状況はわかっている。今回は、気合が入っている。
前進あるのみ にせ藤原山
なにがあろうと前進あるのみ

にせ藤原山

にせ藤原山−藤原山 10:35−17:02 距離1920m 平均速度 300m/h
この区間が一番厳しい藪だった。最大の敵は蔓だ。お腹に引っかかった蔓を切ったと思ったら足が引っかかる。蔓を踏みつけて体を前に出すとザックが引っかかる。藪漕ぎは格闘技ではあるが正面から戦っても勝てない。枝の生え方を見て左に分けるのか右にいなすのかを判断する。蔓はどちらが根元かを見極めて、先端に絡まっている笹を引き抜く。背を越える深い藪では地面の僅かな凹凸を捉えて尾根を進む。相手を良く知って道を明けてもらう。メンバーそれぞれの進み方があって面白い。YmTは蔓のすりぬけがうまく、2番手が引っかかる。YbTは潅木帯の正面突破力は抜群だが蔓が出てくるととたんにペースが落ちる。皆、苦しみながらも藪を楽しんでいるようだ。1時間のピッチがあっという間に過ぎる。藤原山まで60mの登りを残して15:00を回る。今日中に藤原山は必達目標。トップに立ってペースを上げる。2時間休み無しの登攀で藤原山に到着。山頂は藪の中。少し先に笹原を見つけ今日のテントサイトとする。
藤原山 テント場
藤原山

昨日に比べればフラットなテン場

ストレッチをしてからテントを張る。フラットとはいえないが、昨日よりは大分ましだ。バーナーを2台出して調理が出来る。今日の主食はアマノフーズのカレー。軽くておいしい食材があるのはありがたいことだ。お酒がないと食事も短時間で終わる。7時前にはシュラフに入る。ぱらぱらと雨が降ってきたので、コッフェルや、大きなビニール袋をテントの外に広げたが直ぐにやんでしまった。

2012年10月8日 月曜日 晴

 未明の空に夏の星座が輝いている。朝食はミネストローネ。山行中、一回はこれを食べたい。水の量を確認する。各自500ml程度の行動水は確保できている。僕は、非常用の2リットルペットボトルの他に1リットル弱の共同水をキープしている。これだけあれば、無給水で丹後山避難小屋に向かえそうだ。
藤原山−1610m 5:44−10:25 距離1660m 平均速度 350m/h
 ルート取りが一番難しいのが広いピークからの下り初めだ。先に続く尾根が見えている場合には分かりやすいが背丈を越える藪の中で尾根を掴むことは簡単ではない。GPSで尾根の方向はわかるが尾根にきちんと乗っているかどうかの判断は難しい。尾根の始まりで5mずれるとまったく別な方向に行ってしまうからだ。足元の地形を良く見て、尾根が発生する最初のきっかけを見逃さないことが大切だ。笹藪で尾根を外した場合の復帰は特に難しい。トラバースは諦めて真っ直ぐ上り返すのが一番だ。尾根の分岐のたびに右だ左だと声を掛け合いながらルートを修正していく。
密藪 大水上山を望む
こんなやぶの中でも地面を見て尾根を意識するのが肝心

大水上山を射程範囲に捕らえる

1610m−大水上山 10:38−14:26 距離1410m 平均速度 370m/h
 1610mのピークを曲がると正面に大水上山が見えてくる。ひとつ手前の肩には岩場も見える。藪はずいぶん低くなり、踏み跡も明瞭になってくる。足元の紅葉と遠くの展望を楽しみながら歩く。正面、中ノ岳の左には八海山も顔を出している。右手のピラミダルな山は荒沢岳。振り返れば、これまで歩いてきた尾根が平ヶ岳まで続いている。肩の岩場は左側を膝の高さの低木に掴まりながら登る。そして、いよいよ大水上山。頂上直下の岩場を乗り越える。最後の笹原を書き分けると大水上山の標識が見えた。
続いて登ってくるメンバーを握手で迎える。いつもゴールの瞬間はうれしいが、今日は格別だ。達成感に胸が詰まる。山頂の標識の上にカメラを置いて、セルフタイマーで全員写真を撮る。この万歳、みんなの笑顔に、今回の山行のすべてが表されている。
大水上山が目の前に 最後の登り
大水上山が目の前に

最後の登り

大水上山で万歳 歩いたルート
大水上山でルートを繋げる

平ヶ岳から歩いてきたルートを一望

大水上山−丹後山避難小屋 14:43−15:23 距離1660m 平均速度 2490m/h
 登山道を丹後山に向かう。左手には歩いてきた分水嶺の稜線が見える。何度も足を止めて眺めてしまう。しばらく行くと利根川源流の碑があった。昨年5月に歩いたときも探したのだが見つからなかった。この高さでは雪に埋もれてしまう。丹後山避難小屋に到着。黄色い雨天水タンクが見える。中の水はとても綺麗だ。先客は1名、ここをベースに中ノ岳を往復してきたという青年。しばらくすると、荒沢岳の途中まで行ってきたという夫妻も来た。今日はアルファー米の五目飯。それに切り干し大根の煮込みを加える。さすがに今回は食材をすべて使い切った。残ったのは七味唐辛子が少しだけ。4泊分の食料を、コンパクト、軽量に準備し、まったく不満を感じない味と量を提供してくれるのだから、分水嶺チームの食担技術もたいしたのものだ。残っていたウィスキーを飲む。久しぶりに体を伸ばして寝る。
利根川源流の碑 丹後山避難小屋
利根川源流の碑

丹後山避難小屋と黄色い天水タンク


2012年10月9日 火曜日 晴

 5時に起床。雑炊の朝食。コーヒーをゆっくり飲む。水をふんだんに使えるのは本当にありがたいことだ。小屋の日誌に記録をつける。この小屋は越後三山救助隊のメンバーが管理してくれている。今週末には、天水タンクを撤去して、雪囲いをするために登ってきてくれるのであろう。感謝の限りである。
丹後山避難小屋−栃ノ木橋 6:30−9:43 距離4110m 平均速度 1280m/h 下降速度 390m/h
 YbTを先頭に栃ノ木橋に向かう道を下る。YbTは今回の山行に先立って、栃ノ木橋側から避難小屋の状況の下見をしてくれている。それぞれがしっかりと準備して取り組んだことが無事故の踏破につながっている。一昨年の秋、本谷山から下った尾根、去年の5月にネコブ山を越えて下った尾根、日向山の雨量計、これまで歩いてきた尾根が左右に見える。十字峡の小屋まで来て悪天候で撤退したこともあった。この地域には良く通ったものだ。でも、今回の山行で分水嶺として、ここに来るのは最後になる。なにか機会があれば期待とは思うが、他に行くべきところが沢山ある。諦めさえしなければ、分水嶺はまだまだ続く。
下山 麓のブナ林
秋のすがすがしい空気を吸って下山

麓のブナ林には夏が残っている

栃ノ木橋−十字峡 9:43−10:23 距離2200m 平均速度 3300m/h
 林道を歩き十字峡トンネルの出口に着く。小屋で一緒になった北九州の夫妻の車が置いてあった。3週間ほどかけて、いろいろな山をめぐっているそうだ。うらやましい生活である。11:00予約していた時間ピッタリにタクシーが来る。六日町の駅前に出来た「湯らりあ」で汗を流す。前にあった中央温泉とは無関係とのことだったが、泉源は同じだそうである。駅前のLittle北海道で食事をして岐路に着く。

 実は、このルートの踏破は一度は諦めた。残雪期にはリスクが高くなるので、藪山行とせざるを得ない。無雪期に歩いた記録は、どれもツワモノのものばかりで、我々の実績から推測すると、彼らの倍の時間がかかると考えなければならない。1日10時間の藪漕ぎを3日間続けるだけの体力があるのだろうか。途中にエスケープルートがないので、一度、歩き出したら撤退することも出来ない。諦めかけた気持ちを思いとどめさせてくれたのは、やはり仲間だった。踏破するという夢を共有していること、そして、踏破することに意欲を持っていること。そして、これまでの山行で技術を身に付け、装備を工夫して、チームワークを強めたこと。やり抜くという意思が伝わってきた。出発の段階では、成功を確信するまでになれた。今回は天気に恵まれたことも成功の要因である。藪行軍の2日間、あまり日差しがなかったことが水の消費を抑えてくれた。それでも、成功させたのは我等の力なのだ。まだまだ出来る。次の目標は東北シリーズの踏破だ。


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