2012年9月15日〜17日
分水嶺35 黒滝股山
分水嶺 関東完踏に向け 密藪を進む

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メンバー: MrT(CL)、TuB(SL)、YmT、KsM、YbT

 分水嶺関東シリーズの踏破に向けて、残すのは2ヶ所。利根川源流の大水上山−平ヶ岳の間と、那珂川源流の大川峠−大峠の間。いずれも、藪の難コースである。前者は、これまで3度挑戦して、いずれも敗退。後者は、一度企画したものの、参加申し込みゼロという悲しい結末。くじけそうな気持ちを奮い立たせて計画したのが今回の計画。エスケープルートを沢山用意し、リスクを減らして小刻みに進む作戦。

 前回の分水嶺は、7月末に行った八幡平。雨の行軍だった。それ以来、どうも天気に恵まれない。夏に計画していた、赤石沢と、西穂−奥穂縦走は、いずれも天気が悪く中止になってしまった。今回も、台風16号が沖縄で猛威を揮って心配したが、どんなに進路がずれても直接的な影響は受けないと判断して決行を決めた。

2012年9月15日 土曜日 曇 夜は雨

水場
覚えておきたい給水ポイント

 すっかり定番になった7:10浅草発の東武線にのる。いつになく混んでいる。居眠りをして3日間の行軍に備える。会津田島で降りてジャンボタクシーに乗る。こちらも、もう馴染み客になってしまい、暑いですから山で使ってくださいと言って、社名の入ったタオルをいただく。栗生沢の集落を過ぎて、ゲートの手前で降りる。
 11:30 今日は、のんびりと林道歩き。3年前まで車が通行できたとのことが信じられないような荒れた道。昨年の11月に男鹿岳に登ったときよりも、一段と藪化している。
 12:30 1276から下ってきている尾根の先で湧き水を見つける。ゲートとの近くで給水してしまった前回には気がつかなかったが、こちらの方がおいしそうな水だ。今回は、下山まで給水ポイントがないので、ここで3日分の水を確保する。僕は、家から持ってきた2Lのペットボトル2本に加えて6Lを給水。ずっしりと重くなったザックを担いで、さらに林道を歩く。山葡萄を探しながら歩いたけれど、ほんの数房しか見つけられなかった。タクシーの運転手さんも、今年は熊の出没が多い、といっていたけれど、山の実りが少なかったのだろう。
 12:45 大川峠に到着。ストレッチをして、テントを張る。今回、HoRさんからテントを借りてきた。一般的な4−5人用のテントよりも一回り大きいので、5人でも快適。ワインで乾杯。茄子の塩昆布和え。やはり、生野菜はおいしい。主食は、具沢山の煮込みうどん。
藪の林道 ピクニック
3年前までは車が通っていた?

やっぱり、この時間が一番楽しい


2012年9月16日 日曜日 晴 夜は雨 夜の間、激しい雨が降っていたので心配していたが、朝起きると星空が見えた。今回は、天気の神様は味方になってくれるようだ。
 5:00 ストレッチをして出発。しっかりした踏み跡がついていて快調に登っていく。
 5:48-6:06 頻繁にあった赤テープが見当たらなくなり地図を確認すると、1422mのピークを行き過ぎてしまっていた。登り帰すと青テープがあることろから踏み跡が北西に伸びていた。
 7:03-15 上海岳手前の鞍部で休憩。西側には、那須岳、三本槍岳、そして、三倉山まで見渡せる。このペースならば、今回、大峠まで抜けられるかもしれないね、と軽口が出る。
踏み跡 三角点
踏み跡あれば楽なもん!

上海岳の三角点

 7:56-8:06 上海岳に到着。1501.3mの二等三角点がある。ここで踏み跡が途切れる。
 10:56-11:15 距離にして1km、高度で130mの短調な下りに3時間近くかかってしまう。暑さと、2日分の水の重みもあるが、蔦や潅木交じりの藪にペースが上がらない。靴紐が頻繁に解けるのもペースダウンの一因。どんなにしっかり縛っても、笹や木の根にひっかかってほどけてしまう。僕は、沢用のスパッツの中に靴紐を挟みこんでいる。スパッツは、直ぐにボロボロになってしまうけれど、靴紐の解け防止の効果は大きいようだ。
 13:02-17 なんとか予定の30分遅れで、黒滝股山の分岐に着いたと思ったが、地図で確認すると未だ1360mのピークだった。GPSの画面の地形図を見ていたので、近視眼的になって勘違いしたようだ。あぶないあぶない。小動物の獣道を探りながら密藪を進む。足元が僅かに窪んでトンネル状になっているだけなのだが、これだけで、藪漕ぎは格段に楽になる。獣道を外すと、ぐっとペースが落ちるので、ルート読みが大切。だんだん要領を覚えて、少しペースアップする。
那須岳 密藪
流石山、三本槍、茶臼岳

3m離れたら迷子の密藪

 15:12 黒滝股山の分岐に到着。予定の2時間半の遅れ。黒滝股山の頂上は分水嶺からは200mほど外れている。誰も、頂上に立つ気力はないようなので登頂はパス。もう、どこにでもテントを張って今日は終わり、としたい気分なのだけど、石楠花の藪で設営は無理。もう少し先に進むことにする。
 15:16 石楠花の藪をところで笹原を見つける。なんとかテントの大きさ分の平坦部がありそう。ここを幕営地と決め、笹を踏みつけながら入念にストレッチをする。今日は借り物のテントなので、破っては申し訳ない。テントの下に銀マットを敷く事にする。一人がテントの中に入って、笹の反発力で浮き上がらないように押さえながら、ステーを張っていく。張りあがってしまうと、クッションもよく快適な居住空間が出来た。先ずは、水の確認をする。先ず、各自が翌日の行動分を確保、そして、朝食分として2Lを確保。今夜の分として4L近くの水が残る。一安心して、紅茶を沸かす。水に余裕があるとはいいっても、アルコール度数の高いお酒を飲むと、水を飲む量も増えてしまう。紅茶にブランデーを入れて香り付けするぐらいが丁度良いようだ。カレーの夕食を食べて眠りにつく。
那須岳 テントサイト
黒滝股山分岐、ここには張れんね

笹薮も、張ってしまえば快適な居城


2012年9月17日 月曜日 敬老の日 曇り後晴れ 5:15 夜の間降っていた雨が残っている。合羽を着るかどうか迷う程度。北東に向かう尾根から、東に向かう尾根が派生する分かりにくいルート。東への方向転換が遅れて、トラバースを強いられる。笹薮のトラバースは厳しい。登り上がるつもりで進まないと、滑りながら下降してしまう。15分ほど格闘して、正しい尾根に乗る。尾根上で獣道を拾って歩けば、そこそこのペースは稼げる。
 6:45-58 時速400mのペースで歩いて、1389mのピークに到着。昨夜の幕営予定地。当初の予定では、分水嶺の尾根を1624mのピークまで歩いて、コブキ沢に下りる予定だったが、昨日、今日のペースを考えると、とても予定時間内にはたどり着けない。その手前のエスケープポイントは1504mのピーク。約2km。ちょっと迷ったが、「迷ったときは安全サイドに」の原則に従って、ここから下山することにする。直ぐに赤テープがある。とぎれとぎれながら踏み跡もあって快適に下っていく。
那須岳 テントサイト
1389m で分水嶺を離脱

高濃低薄の笹薮を下る

水場
がんばって、押して行ってね

 8:30 地形図に描かれている崖マークも、5mほどの斜面で、なんなく降りて林道に降り立つ。車の通行は無理そうだが、いちおう林道と呼んでも違和感がない程度の道。だれにも合わないだろうと歩いていたら、若者5人組が自転車を押して歩いてきた。福島側に抜けるのだそうだ。人のことは言えないけれど、物好きなことだ。
 9:09-9:45 道が崩れて川原と化した場所で休憩。合羽のズボンを脱いで、靴を洗う。フライ釣師が通りかかる。水が少なくて、さっぱり釣れないそうだ。
 11:10-20 林道ゲートに到着。3時間待っていればタクシーが迎えに来てくれるはずだが、そうもいかないので、アスファルト舗装された道をとぼとぼあるく。ダムの北側にあるのは、県営の深山発電所。2300kWの小規模な発電所だ。しばらく歩いていくと、沼原発電所の展示館が見えてくる。こちらは、675,000kWのJ-powerの揚水発電所。展示館に若い係員の人がいたので、電話があるかどうか聞いたが、電話はないと。もう少しダムのほうに歩くと携帯が通じるというので先に進む。確かに携帯が通じて、タクシーに時間を早めてきてもらうことにする。発電所のゲート前の広場で、テントを干しながらタクシーを待つ。日差しと風で、気持ちがいいように乾く。
 板室温泉 幸乃湯でタクシーを降りる。無色の温泉だが、やわらかい泉質と低めの温度でくつろげる。3mほどの高さの樋から落ちてくる打たせ湯は、なかなか強力で気持ちが良かった。休憩所は、使用料を取る割には、品切れメニューが多くて今ひとつではあったが、ビールがうまいことには変わりはない。路線バスで黒磯駅に出て、普通列車に乗って帰る。


 余裕を持って計画をしたつもりでも、なかなか計画通りには進まない。関東シリーズ踏破まで、残り2ピッチ。先ずは、来月の平ヶ岳。歩きながら、今年は断念しようかとも思ったけれど、やっぱり行こう。今回学んだのは、丹念に踏み跡を拾うこと、靴紐対策に一段の工夫をすること。そして、なかなか解がないのが、無雪期の水計画。

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