2012年6月8日〜10日
和賀岳〜真昼岳
分水嶺32 東北シリーズ第一弾 早春の花を楽しむ


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6月8日

8:03登山口出発…9:27-34水場…10:55-59薬師分岐…11:09-25テント設営…12:26-311354m休憩…13:05-22和賀岳…14:07-13休憩…14:53テント場


6月9日

4:44出発…6:16-30甲山分岐…7:18-27中ノ沢岳…8:55-9:03風鞍…9:25道間違い引返し…10:02-08風鞍…10:51-11:001020.1m…12:07-18休憩…13:40-43鹿子ノ山分岐…16:23-26940m峰…16:39-45テント場…17:00-17:05水場…17:20テント場


6月10日

4:35出発…5:36-411006m峰…6:20-39真昼岳…7:18-22休憩、電話…7:49-55兎平分岐(分水嶺尾根離脱)…8:47渡渉1回目…8:49泳ぎ渡渉…9:44終点



今回は、中央分水嶺東北シリーズ第一弾として、秋田・岩手県境の和賀岳〜真昼岳を歩く。分水嶺仲間を増やすために一般道を通る楽ちんな計画としたが、参加したメンバーはいつもの精鋭8名だった。


6月7日(木)

山行地が関東から東北に移ったため、横浜からの距離も遠くなり往復の時間もかかることになる。そこで、今回は夜行バスの登場だ。江ノ電バスの田沢湖行きの夜行長距離バスに横浜から乗って道の駅なかせんで下車する。バスは、3列シートでトイレもついている。難点は、トイレがついているがためにサービスエリアでの休憩が無く、途中で身体を伸ばすことが出来ないことだ。とはいえ、前後左右の席の間隔が広くゆったりとしたシートは、落ち着いて寝られて快適だった。



6月8日(金)

なかせんから、予約していたジャンボタクシーで薬師岳登山口に向かう。気さくな運転手さんで、途中で見かけたタニウツギの、イワシバナという地元での呼び名とその花にまつわる風習などを教えていただいた。砂利道を避難小屋まで送っていただき下車。

小屋前でストレッチの後、出発。

林道をしばらく行くと甘露水口に到着。登り始めると早速花たちが現れる。オドリコソウにラショウモンカズラ、ヒロハコンロンソウ、サワハコベ、ツクバネソウなど。更にチゴユリやユキザサ、マイヅルソウ、それにイワカガミの大群落まである。滝倉で沢の水を汲む。尾根筋には水場がないので明日の夕方までの分を確保した。一人あたり3リットル程度。顔を洗い、手ですくって飲むととても美味しい。



タニウツギ

この花は、岩手地方ではイワシバナと呼ばれます。
名前の由来はイワシの捕れる頃に花が咲くからだそうです。
忌み花とされ、自宅に植えたり花を持って帰ってはいけないとされます。
なぜなら、この木の枝で骨拾いの箸を作ったり納棺する杖を作ったりするからだそうです。
また、家の中に入れると火事になるからとも言われています。


オドリコソウ


ヒロハコンロンソウ


ラショウモンカズラ


サワハコベ


マイヅルソウ


ツクバネソウ


チゴユリ


ユキザサ

再び登り始めると、トキワイカリソウを見付ける。その直ぐ先にシラネアオイ。感激。私にとっては幻の花だったからだ。数年前に尾瀬に行った際、萎れかかった一輪を見かけたのみで、それ以来会うことが出来なかったからだ。早速写真に収める。更に進むとサンカヨウやエンレイソウ、スミレサイシン、ミヤマカタバミも花をつけている。


ハルゼミ


トキワイカリソウ


ミヤマカタバミ


スミレサイシン


サンカヨウ


エンレイソウ

薬師分岐に到着。ここから分水嶺に乗る。尾根を歩き始めれば、これも私のあこがれの花であるオオバキスミレが群落を形成して咲いている。更にイワキンバイにエチゴキジムシロ、最後にシラネアオイの群落。もう何も言うことが出来ないほど感激した。

薬師岳に到着してテント場適地を探す。これから向かう薬師平はなだらかな草原のようだが、笹の状況が判らない。結局、山頂の平場にテントを張ることにした。


オオバキスミレ


シラネアオイ


イワキンバイ


エチゴキジムシロ

荷物をデポして和賀岳に向かう。尾根に咲く花を満喫しながら進む。薬師平は、雪渓も残りテント場にはもってこいだったが、今更張り直す気はしない。次回分水嶺を繋ぐときには候補地にしよう。花街道は更に続き、ムラサキヤシオ、オオカメノキ、ツマトリソウ、ミツバオウレン、ハクサンチドリ。ミネザクラも咲き残っている。和賀岳に到着するとチングルマまで咲いている。普段は北アルプスに行ってようやく見ることの出来る花だ。塔ノ岳より低いのに、この植生はなんと言うことだろう。さすが東北の山だ。


ムラサキヤシオ


オオカメノキ


ツマトリソウ


ハクサンチドリ


ミツバオウレン


ミツバオウレンの変種


チングルマ


小杉山手前から和賀岳を望む

和賀岳は、真昼山地の最高峰で標高は地図上では1440.0m。点の記では一等三角点「和賀嶽」1439.50m。昨年の7月31日に改測(測量し直す)しているので、東日本大震災で50cm低くなったということだろうか。
(実際は、大正時代の測量からの変異の蓄積と誤差によるもので、この地域の今回の地震による沈下は数cm程度のようです)


和賀岳山頂


和賀岳は一等三角点「和賀嶽」
ICチップが埋め込まれている


薬師平はテント適地だ

来た径を戻って再び薬師岳に到着。美味しいワインとウイスキー、つまみも多種多様。そして麻婆茄子丼の夕食。17時過ぎに気持ちよく就寝。




6月9日(土)

天気予報では、一日中雨とのことだったが、空の雲はなんとか雨粒を落とさずに頑張っていてくれる。3時半起床。朝食はトマトリゾット。朝はやっぱり喉の通りがよいものが助かる。5時少し前に出発。朝焼けが綺麗だ。薬師分岐から甲山に向かう尾根径に進む。数日前に自然公園指導員の方が歩いているはずなのだが、その気配は全く感じられず、径いっぱいに広がって咲き誇るオオバキスミレやマイヅルソウを申し訳なく思いながらも踏みつけて進む。笹を切り開いて通している径は、日当たりがよいのか足の踏み場が無いほどの野草の天国になっているのだ。

今日も新しい花にいっぱい出会う。ツバメオモトやオサバグサ、それにゴゼンタチバナ。雪渓が消えたばかりの原っぱにはカタクリやキクザキイチゲも咲いている。早春から初夏の花までいっぺんにに見ることが出来るなんてなんて幸せなことだろう。


1108m峰から薬師岳(左)と和賀岳(中央)を望む


薬師岳で迎えた朝日


ツバメオモト


オサバグサ


カタクリ


イワカガミ


ゴゼンタチバナ


キクザキイチゲ


キクザキイチゲ(濃色)

9時には風鞍に到着。歩き始めて4時間ほどたったので行動食を摂る。地図の等高線を見れば、ここから南風鞍まではなだらかなルートのようだ。まっすぐ進もうと思ったら、方向違い。左に90度方向にある径を下る。意外と急な下りでぐいぐい下る。一旦登り返すとまた急な下りだ。なんとなく違和感を感じる。20分ほどしてSLからストップの声。どうも径が違うようだ。いつの間にか北東に向かっている。GPSで確認したところ、風鞍からの出発地点で既に間違えていたようだ。他に径はなかったのにと思いながら30分登り返す。

風鞍に辿り着いてみれば、今登り返した径の直ぐ左側にうっすらと径路が続いている。道標を見れば、今登り返した径は黒森口への下山道。ほんの少し角度を変えて南風鞍への表示がある。よく見れば判るのだがよく見ないと判らない・・・気を取り直して、南風鞍へのルートを進む。

南風鞍で一息。ここの三角点は二等三角点「青志賀」。地図の表記では標高1020.1mだが、2011年10月31日改算のデータでは1019.66m。和賀岳と同じで50mほど低くなっている。ただし、改算なので実際に測量したものではない。測量した近傍のデータから計算によって求めた標高のようだ。


南風鞍ピーク


南風鞍は二等三角点「青志賀」

更に高低差のゆったりとした道程を進む。河口登山道県境分岐の少し手前で雨が降り始める。径間違いで1時間ロスしたため、雨がひどくなる前に今日の目的地である峰越林道手前で適地があったら泊まろうと話す。

県境分岐から高低差がきつくなってくる。雨に濡れながら、あと少しあと少しと思いながらも足が重くなってくる。風も強くなってきた。踏み跡も不明瞭になり、見失っては立ち止まり、皆で捜索して確認しながら進む。時折現れる倒木は、先頭の男性が力ずくで移動して径道を切り開いてくれる。ようやく後1kmとなって見上げるのは急な登り。径もはっきりしなくなってくる。ガレと低木と笹とフキの藪の中から微かな径の形跡を探しだし、両手両足をフルに使って掻き分けながら急斜面を這い登る。ようやく最後のピーク手前に来たとき、広々とした雪渓が見つかった。ここでテントを張ろうという意見もあったが、あと少しと気持ちを奮い立たせ進むことにする。強風の尾根を下り始めるとまもなく駐車場のラインのようなものが見えてきた。ようやく峰越林道に到着したのだ。風鞍手前では14時前には着くねなどと楽観していたのだが、着いてみれば16時40分。実に12時間の行程であった。

女性陣にはテントを張ってもらい、男性陣は水汲みに林道を下る。15分ほど下ると沢がある。昨日の沢とは違い、開発された林道脇の沢は生水のままでは飲み難い。沸騰させた後使用することにする。テントに戻れば女性陣が暖かい湯を沸かしてくれていた。実は、女性陣はテントを張った後、低体温症の初期症状のように思考力が低下し寒風吹き荒ぶ中を放心していたそうだ。あぶないあぶない。湯を沸かしアルコールを身体の中に入れてようやく落ち着く。今日の夕食はカレーライス。これも身体が温まって助かった。19時頃就寝。一晩中強風が吹き続け、テントが歪み身体を揺すられる。ゆっくり寝られないまま翌日を迎える。




6月10日(日)

隣のテントは3時から起きて支度をしている。3時半起床のはずなのにとぼやきながらそれでも20分にはシュラフから這い出し支度を始める。朝食は餅入りスープ。早々にテントから出て出発の準備。さっきまで降っていた雨は止んだようだ。隣のテントのメンバーにやけに早かったねと声をかけると、雨の時は3時起床のはずだったとの答え。全然記憶にない。これも低体温症のせいにして良いでしょうか。それでも段取りよく4時半に出発。
登り始めて直ぐにニリンソウを見付ける。スプリングエフェメラルだ。6月にこれを眺められる幸せ、本当にありがたい。2時間弱で真昼岳に到着。最高峰は和賀岳に譲るが真昼山地の主峰だ。頂上の小屋は神社の覆堂と避難小屋を兼ねているようだ。ここにも三角点があるはずなのだが、いくら探しても見あたらない。帰ってから調べたところ、小屋の下になっているようだ。
一応三角点は、二等三角点「眞昼岳」2011年10月31日改算で1059.53mとなっている。地図上では1059.9mなので、ここも50cmほど低くなっていることになる。


真昼岳山頂に到着


真昼岳山頂小屋内のお社

一息ついて兎平(うさぎかい)分岐に向かって進む。だんだんと天候が回復してくる。目の前にはレンゲツツジ。遠く麓には美郷の田んぼが光って見える。しかし振り返っても真昼岳の山容を確かめることは出来なかった。


レンゲツツジ


アズマギク

兎平分岐を右に進み尾根を下り、向沢の二俣出会いから右岸を辿れば素直にタクシーの待つ善知鳥(うとう)口に辿り着くはずだった。でもそうは巧くゆかないのが分水嶺山行の楽しいところ。

きついと思った支尾根の下りは、急降下ではあるが落ち葉の積もった径で、クッションが効いて歩きやすく膝にも負担がかからない。途中で立派な滝も眺められて楽しい。二俣出会いとなる松坂口手前で沢登りをする団体に遭遇した。

二俣に到着すると、あるはずの右岸の径路がない。沢の左岸に踏み跡がある。徒渉だ。1回だけと思ったが、右岸へそしてまた左岸へと徒渉が続くことになる。いくら雨で靴の中が濡れているといっても、子供の雨靴遊びのように水の溜まった山靴をカポンカポンと音をさせながら歩きたくない。浅そうな所を狙って飛び石伝いに抜けようとするのだが、ここの岩は結構滑りやすい。踏み外してボチャンと落ちる者有り、バランスを崩す者有りでヒヤヒヤ。ついにはCLが見事に滑り前のめりで沢にうつぶせに倒れて泳ぐ羽目になった。それからは皆あきらめて、水を厭わずしっかり足元を確かめながら確実に渡るようになったようだ。


尾根の新緑が美しい


ツクバネウツギ


向沢は徒渉を繰り返す


途中で見付けたニリンソウ

そんな徒渉を十数度も繰り返し、ようやく善千鳥口に到着。待っていていただいたタクシーに乗りこむ。、千畑温泉サンアールで3日分の汗を流し、再びタクシーで大曲へ。
タクシーの車窓越しに振り返ると、雨があがった青空の下に立派な山容の真昼岳や雪渓をまとった和賀岳を望むことが出来た。ちょっと嬉しく思いながら帰宅の途についたのだった。



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